あたしと彼のオトナな契約
弘明は「なんでそうなるかなぁ~」とかまだブツブツ言っている。
「たぶんココ使えって事じゃねぇ?」
と言って、弘明がガチャとドアを開けたのは、十畳ぐらいの畳の部屋。
「えっ? 広くない? いいのっ?」
「あぁ。 俺とお前の仲だし、お前、なんか哀れだから。 仕方なくだけどな」
「哀れじゃないっ! 自立するためなんだってば!」
あたしは、自分よりも10㌢も背の高い弘明をキッと睨む。
「俺のとこに来てる時点で自立じゃねーじゃん。 やっぱ晋也さんとケンカしたろ?」
「そういうんじゃないけど……。 ちょっと、外の世界が気になっただけ」
「ふーん。 あそ」
保険に入っていないお母さんが入院してから、家を売って入院費に当てたこと
それから晋也さんの家に一緒に住んでいること
それを知っていて、色々と相談にも乗ってくれると思ったのは、弘明だけだった。