あたしと彼のオトナな契約
「弘明ーっ! そういえば今日、那奈ちゃん来るって言ってたぁ」
あたしが下を向いたままでいると、一階から弘明のお母さんの声が聞こえてきた。
弘明は黙って部屋を出ると、バタバタと階段を降りていった。
あたしも静かにそれにならう。
だんだんと、弘明とお母さんの会話が聞こえてくる。
「那奈、もう来てる」
「えっ! ちょっと弘明、お茶くらい出してよー」
「や、アイツ今来たばっかだから」
「今ね、那奈ちゃんのお母さんの病院行ってきたんだ。 久しぶりに、お見舞い」
そこで、あたしの足が止まった。
もしかしたら、あたしは聞いちゃいけない話なのかもしれない。