あいつを抱いたあの日から。


「…あっう・・・」


やっぱり声が出ない。

胸がドクンと高鳴る。


「…やっ…だ…」



今にも消えそうに、蚊の鳴くような声はやがて嗚咽へと変わった。


私は知ってしまった。

そして気づいてしまった。


バカな私にでも写真を見たら分かる。


病院のベッドで
かっちゃんのお母さんが
幸せそうにタオルでくるまれた
私とかっちゃんを抱いている。



かっちゃんは
知っているのだろうか。



それとも
知らないほうが幸せという言葉を通したほうがいいのだろうか。



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