花音ちゃんと私
第一章
花音ちゃんは自分のことを「恋多き乙女」と表現することがある。

花音ちゃんのことを簡潔に説明しよう。

高校二年生、十六歳。双子座のA型。身長150センチ前半、体重は秘密。特技はお菓子作りで、苦手なことは掃除。自称「どこにでもいそうな女の子」以上、説明終わり。

「里子、やっぱりあの人あたしのこと見てる」

そう言いながら花音ちゃんは私の肩にかけてるマフラーをひっぱった。

時は夕暮れ。

この季節は特に夜になるまでの時間が短く、「小松屋」と書かれた銭湯の煙突越に見える空は薄墨を垂らしたように暗い。
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