花音ちゃんと私
もう夜が、すぐそこまできている。

私は溜め息をついた。

花音ちゃんはといえば、私の背中にぴったりくっついて、大袈裟にも鞄で顔を隠している。

コロッケを揚げる肉屋の前を通り、「和やか平和、西町商店街」のペンキが禿げかけたアーチをくぐるとやっと、花音ちゃんは私から離れた。

「ね、あの人私のことじっと見てたでしょ?」

空気が冷たくなってきた。花音ちゃんは頬を紅潮させて言う。

「ほら、冴島フラワーの前でバケツを洗ってる人」
ここまで言うなら観念しよう。

私は仕方なく、冴島フラワーのほうへ振り返ってみる。
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