花音ちゃんと私
田中君は顔が真っ赤だった。

「向こうで話てもいい?」

そう言って、田中君は渡り廊下を指差した。

私と田中君は入学したときから席が近くなることが多く、たまに話したりするくらいの間柄だ。

彼は数学が得意なので、わからないときはとても助かった…ということを思い出す。

渡り廊下は誰もいなかった。陽が落ちて、辺りは大分暗い。

蛍光灯の下で未だ顔が赤いままの田中君は、まずこう言った。

「明日、チョコくれる?

私は「え?」とだけ返した。

しばらく間を置いて、彼は言った。
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