聞いて、姉貴
姉貴がアイツとつきあい始めて、もうすぐ半年が経とうとしていたある日のことだった。
夜。多分11時ぐらい。
俺は借りていた英語の参考書を返そうと、姉貴の部屋に向かった。
「…姉貴ー…」
入るよ、そう言ってドアノブを捻ろうとした時。
「…だからあれは、違うって!」
───え?
思わず、手を止める。
聞こえてきたのは、姉貴の声。
どうやら、誰かと電話している様子だった。
でも、なんだ?
ただならぬ雰囲気。
聞き耳なんか立てるつもりじゃないのに、その場から動くことが出来ない。
「…信じてよ!」
「雄司っ──」
……雄司。
世界で一番、キライな名前だ。