聞いて、姉貴
姉貴の涙
そして、事件は起こった。
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「陸、顔洗うんだから早くそこどいてよね」
その日も姉貴は、図々しくも俺の横に割り入ろうとしてきた。
体がイヤというほど密着して、正直…やばい。
「うっせーな!風呂場で洗えっつーの!」
真っ赤な顔を気づかれないよう、慌てて姉貴の体を押し戻す。
…こんなやり取り、もう日常茶飯事だ。
フン!と唇を尖らせた姉貴と、鏡越しに目が合った。
「だいたい、何よその頭。高校生のくせにナマイキ!」
が、正確には俺の頭を見ていたようだ。
少しでもかっこよく見せたくて、せっかくワックスで整えた髪を生意気の一言で片付けられるとは。