聞いて、姉貴
「…く」
「……」
「…ねぇ、陸ってば」
「え!?あ、わりぃ。何?」
ハッとして顔を上げると、何やら膨れっ面で身を乗り出すクラスメイトの姿。
「もう。さっきから呼んでるのに!」
「ごめんって。で、何?」
つか…誰だっけ?
2年に進級して新しいクラスになったものの、俺は未だに全員の顔と名前を把握できていなかった。
なのにナゼか相手は俺を知っているパターンが多く、馴れ馴れしい呼び方までしてきやがる。
「だから、カラオケ行こうって話! 女の子いっぱい連れてくし」
「ごめん無理」
間髪入れず 即答した。
「はぁ!何でよっ」
「今日はちょっと外せない用事があってさ。じゃあな」
納得いかなそうに唇を尖らせるそいつを残し、俺は足早に教室を出た。