聞いて、姉貴
「…ッ、やべ」
何やってんだ、俺は。
姉貴の頬から慌てて手を離した。
時計の針は、既に10時を回っている。
俺は姉貴を抱きかかえ、そのまま部屋へと向かった。
ほんの僅かな時間だけ、姉貴は俺の腕の中で眠り姫になる。
いっそ、このまま時間が止まればいいのに────。
「…ほら、着いたぞ」
耳元で囁いて、そっとベッドの上に横たわらせる。
毛布をかけてやると、一瞬だけ姉貴の唇がピクリと動いた。
……触れたい。
喉がゴクリと鳴った。