聞いて、姉貴
───その時だ。
ゆらりと現れた、長身の影。
(……来た)
ゴクリと唾を飲む。
見ているだけで、俺の背中にも緊張が走った。
ソイツはそのまま、姉貴の目の前に腰を下ろす。
…が、姉貴はそれに気づいていないらしく、手元のメニューに夢中になっている。
──何だ?
あの男…笑って……
その瞬間。
姉貴の目がソイツを捉え、その体が微かに震えたのを見逃さなかった。
恐らく、ヤツが突然現れたことに驚いているのだろう。
雑誌を持つ手に力が入る。
──…そして。
ソイツの手が姉貴の腕を掴んだ瞬間。
俺は雑誌を投げ捨て 店を飛び出した。