聞いて、姉貴
中に入るなり、姉貴はまじまじと部屋を見渡していた。
「なに?そんなに珍しい?」
「や。相変わらず何も無いなーって」
「シンプルって言ってくれる?」
他愛ない会話を交わしながも、俺は緊張していた。
密室に好きな女がいるんだ。
意識しない訳が無い。
どうにかごまかす為に、音楽をかけようとコンポに手をかける。
「姉貴、音楽何聴く……」
振り返った瞬間、目を疑った。
姉貴が持ってんの…あれ、アルバムじゃねぇか!
「って、何勝手に見てんだよ!!」
「あっ…」
慌てて姉貴の手からアルバムを取り上げる。
──これは。
これだけは、絶対に見られるわけにはいかない。
「…陸、それって」
「お前…見た?」
恐る恐る聞いてみた。
──コクン。
小さく頷く姉貴。
「ハァーッ……」
マジかよ……。
最悪だ、まさか本人に見られるなんて。