聞いて、姉貴
薄暗いリビング。
電気も付けずに、俺たちはソファーの上に居た。
「…っ、」
未だ泣き止まない姉貴を、ただ黙って抱きしめてやる。
──分かってるよ、姉貴。
アイツと会ったんだろ?
思い返せば、朝から様子が変だった。
「どっか行くの?」
そう聞いたとき、姉貴は微かに目を泳がせたんだ。
俺がその時点で、姉貴の異変に気づいてやってたら。
そしたら、こんなに傷つけずに済んだのかな─…
「…姉貴」
未だ震えるその肩に、そっと手を置いた瞬間だった。
「…ッ」
見えてしまったんだ。
姉貴の首筋。
白い肌に嫌でも目立つ、赤い痕の存在に。