聞いて、姉貴
彼女と会うときは、専ら公園か梓の家だった。
梓は俺の家に来たがったけど、頑として拒否し続けた。
──会わせたくなかったんだ。
姉貴に知られたくなかった。
何より、姉貴を前に梓にどう接すれば良いかが分からなかった。
つきあい始めて2ヶ月経った日。
俺は初めて梓を抱いた。
そして、俺にとってのファーストキスもした。
それは、想像していた苺味なんてちっともしなくて、味気無くて。
この行為に意味があるのかすら疑問に思えて。
それでも梓は、毎日積極的に唇と体を重ねてきた。
下唇に噛みつかれながら、──あぁ、女の唇は柔らかいな、なんてぼんやりと考えていて。
ふと、
姉貴だったら?
姉貴だったらどんなキスをするんだろう?
姉貴だったらどんなふうに抱かれるんだろう?
そんな疑問が頭をよぎった瞬間、俺は梓の肩を掴んで体を離していたんだ。