聞いて、姉貴







「ねぇ、聞いてるの?」


「…あぁ、聞いてるよ」




梓は不機嫌だった。

原因は、俺。


その日は梓の誕生日で、前々から二人で過ごす約束をしていた。

それなのに俺はといえば、家で寝込んでいる姉貴が気になって気になって、正直デートどころじゃなかった。

梓の話も上の空。


へぇ、とか、あぁ、くらいの相槌しか出来ない。


そんな俺に、ついに梓の堪忍袋の緒が切れたのだ。


「りっくん。今日は一日一緒にいてくれるって約束、覚えてるよね?」


「……」


「…りっくん?」


梓の顔つきが変わった。




俺は、きっと最低な男だ。

彼女の誕生日に、帰りたいなんて思うんだから。



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