聞いて、姉貴
「中村さーん、もう一件行きましょうよ」
「こら。未成年が何バカなこと言ってるんだ。お前はこのまま帰宅コースな」
そんなぁ、とすがり付く俺を、中村さんが呆れたように引き離してくる。
「親御さんが心配するだろ」
「二人とも夜勤ですぅ」
言いながら、俺はふらふらと道路脇の電柱にもたれかかった。
やばい、頭がクラクラする。
バイト先の先輩に誘われて参加した飲み会。
酒だと気づかずに飲んでいた柚子サワーが、今頃になって回ってきやがった。
「陸。お前はもう帰れ。タクシー拾ってやるから」
「うぅ…中村さんひどいっす」
最後の悪あがきで泣き真似をしてみても、中村さんは平然とそれを交わし、タクシーの手配を始めた。