聞いて、姉貴



カチャ・・・


背後でドアの開く音が聞こえて、ゴクリと息を飲んだ。



「ったく、何度も呼んでたのに。早く食べちゃいなさい」


「う、うん……」


呆れ顔の母さんに小さく声を上げて、姉貴が隣に腰を下ろす。

椅子を引く音が、やけに鼓膜に響いた。



「わ、わぁ、おいしそー」


目の前に置かれた食パンを見るなり、姉貴が乾いた声をあげる。

─…何なんだ?


「そう?ただの食パンじゃない」


俺の言葉を代弁するように、母さんがツッコミを入れる。


「……そういえば、陸。あなた、昨日も夜中に帰ってきたでしょう」


って、俺に話を振るなよ!

思わず口に運ぼうとした玉子焼きを落としそうなった。



落ちつけ、俺。


昨夜練習したじゃねぇか!




< 68 / 180 >

この作品をシェア

pagetop