聞いて、姉貴
姉貴にバレないよう、大きく息を吸って。
「……あー。全然記憶ないや」
そう言った瞬間、姉貴の肩が小さく揺れた気がした。
「記憶ないってあんた。帰ってきたことすら覚えてないの?」
ナイス母さん。
「ん、まったく」
平然を装って答える。
そして……
「陸!」
とうとう痺れを切らしたのだろう。
バン!と手をついて、姉貴が口を開いた。
「なに?」
「昨日のこと!覚えてないの?」
……やっぱり。
姉貴も気にしてたんだな。