聞いて、姉貴
あれは一夜の過ち、とでもしておこう。
姉貴を好きなのは事実だ。
否定なんかしねぇ。
姉貴に触れたいのも事実だ。
でも。
俺は姉貴の為に、身を引くと決めた。
昨晩の動揺した姉貴の顔が脳裏に蘇る。
─…信じられない
そんな愕然とした表情で俺を見つめていた姉貴。
あんな顔されて、これ以上手ェ出せる訳ねぇじゃんか。
この想いは、俺の胸の奥だけに閉まっておくしかないんだ。
隠して、鍵をかけて。
今後一生、アイツに悟られることの無いように。
今の俺に出来ることは、とことん『弟』を演じるだけ。
──それが、近親者に抱いてはいけない感情を抱いてしまった俺への罰。
傷つけてしまった姉貴への罪滅ぼし。