聞いて、姉貴
「陸、洗面所占領しないでよー」
「お前な…割り込み癖、やめろ」
今日も姉貴は、朝からご機嫌だった。
表情を見れば一発で分かる。
これは寝不足の顔だな、
とか
昨日泣いたな、
とか
アイツと何かあったな、
とか──……
皮肉なことに、きっと姉貴自身よりも俺のほうが姉貴を分かってる。
小さい頃からずっと側で見てきたんだ。
僅かな変化も見逃さない。
多分今日のこの表情は……
「…会うのか?今日も」
「へっ!」
俺の言葉に動揺したのか、姉貴は持っていた歯磨き粉をグニャリと押し潰した。