聞いて、姉貴
俺の知らない姉貴。
確実に、その距離は開いてく。
もどかしくて。
でも、どうしようもなくて。
俺はいつも姉貴の少し後ろから、姉貴の幸せを指をくわえて見てることしか出来ないんだ───。
「ね。陸、今日の髪型変じゃないかな?」
いつも姉貴は、最後に必ず俺に確認する。
髪をセットした時。
化粧をした時。
新しい服を着た時。
『男の子目線の意見が聞きたい』なんて姉貴は言うけど、それが俺にとってどんなに皮肉なことか、お前は分かってないんだろうな。
だけど俺は、そんな自分を圧し殺して、平然を装って言ってやるんだ。
「…変じゃないよ」
可愛い、なんて言ってやるかよ。
今の俺にはこれが精一杯だ。