〈実話〉いつの日か…
『今回は、どうなさりますか?』


『おろします…』


『産めないなら、ちゃんと避妊をして下さい。体にだって、すごい負担がかかるんですよ』


『はい。すいません』


先生からの厳しい言葉


泣くのをこらえる姿を見て


『理由は知りませんが産める時が来て生まれてきた時には、しっかり育ててあげて下さいね…』


優しく言った。


どんだけ泣きたかったか…


きっと私の姿を見て、産みたくても産めない状況なんだと察したのかもしれない。


私は涙を拭き診察室を出た。


少し間を空けてカツの横に座った。


何も言ってくれない。


置いてある雑誌をただ黙って見てるだけ。


それを横目で見ながら寂しさを感じた。


本当なら優しい言葉を言って抱きしめて欲しいぐらいなのに…


カツは何とも思わないのかな?


お腹に手を当て心の中で、順番が来るまで謝り続けた…
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