届かない声
全章
 そこは静寂に満ちた空間だった。オレンジ一色に染まったその広い部屋の中、彼女は1人、椅子に座っていた。昼間は生徒達の喧騒や授業による独得の静寂に支配されているその部屋は、今、真に静まっていた。

 僕はその空間に入るのを若干躊躇った。僕が入ることで、その雰囲気を壊してしまいそうに思え、勿体無く思えたのだ。

 だが、このままでいても仕方ない。僕は一度深呼吸をし、一歩踏み出した。幸いにも扉は開きっぱなしになっており、音を立てずに入ることができた。
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