届かない声
「あいつと一緒にいたのはいつくらいからかな、覚えてないけど」

「うん」

「うんと小さい頃から、気がつけばいつも一緒にいたんだっけ」

「へぇ」

「ずっと、何するにしても一緒だった。出かける時も、悪さする時も、何もかも」

「うん」

「兄弟みたいなもんだったなぁ。高校も一緒になって、なんか嬉しくて」

「うん」

「いつの間にか、意識するようになっていて」

「…うん」

「好きだって言いたかった。言えればよかった。でも、あいつは、ここに来ない…」

 それっきり、彼女は黙り込んでしまった。

ただ、時折痙攣するように肩が震えていた。
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