Cutting☆Lovers
「…勿体…な…い?」

「えぇ」

少しの間もないまま返ってきた返事に、すかさず言い返した。


「じゃあ、あんたにあげる」


あたしの中にある記憶も感情も全部捨てたくて、勢いよく自分の髪を切って振り返り声の主に渡した。

その時、初めて声の主、上田の顔を見た。

男にしては珍しく和服姿で、あたしの髪と同じくらい綺麗な髪を一つに束ねていた。

「本当に切っちゃったんですね」

信じられないといったような様子であたしの髪を握っていた。

何も話さないあたしに、残りの髪も切るのかという問いがかけられ、首を縦にふると、鞄とあたしは素早く抱き上げられた。

お姫様抱っこなんて、生きてるうちにされるなんて思ってもみなかった。



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