クリアネス

あたしは斉藤さんの熱がわずかに残る体を冷ますように、窓際の涼しさを味わいながら、今日も美しいレオの姿をひそかに見つめる。


ホストたちが事務所でどんな会話をしているかまでは聞き取れないけど、キャッキャという笑い声だけが、切れ切れにあたしの耳まで届く。



向かいのマンションから視線でストーキングされているとも知らずに、レオは隣の男と「あっち向いてほい」を始めた。


「あっち向いてほい」って、お前は子供か。

あたしはいつもこんな風に、遠くからひとりでツッコミを入れる。



……あっ

ゴム製のトンカチ登場。

本気だな。


頑張れレオ。


あ、勝った! 

よし殴れ!



……うわあ

力いっぱいかよ。


あーあ、相手のお兄ちゃん、痛そうな顔してるし。


よっしゃ、2回戦。


あっち向いて、ほいっ!



……って、やばい!!

こっち向いた!! 


あっち向くって言ったくせにっ。

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