クリアネス

マユミは肩より上の長さで切りそろえられた黒髪をかきあげながら言った。



「ねえ社長。あの子がここに入りびたるのだって、そんなに悪いことじゃないのよ」


「ん?」


「だって、ここなら常にコンパニオンが待機してるし、みんな隼人を可愛がってるもの。
成瀬店長にしてみれば、よけいな心配せずに仕事に打ち込めるってことでしょう?」


「……ん」



確かにそうだな、と雪村はうなずく。


とことんマユミに弱いのだ。



「だからね、その新店舗のお話、成瀬店長に任せてあげてもいいと思うの」



雪村はしばらく考え込み、


「なるほど……。おい成瀬」


「あっ、はい」


「お前、来週からオープン作業にも関われ。働きようによっては、そのままお前が責任者だ」


「え……」



雪村はそう言い残すときびすを返し、外で待たせている車へと向かった。



「あ……ありがとうございます!」





< 109 / 270 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop