クリアネス
「隼人、お菓子食べる?」
マンガ本をめくる手を止め、隼人は顔を上げると、マユミの差し出したスナック菓子を見て
「やったぁ」
と本を放り投げた。
香ばしいバーベキューソースの香りが、隼人の食欲を刺激した。
「ありがとう、マユミお姉ちゃん」
夢中でほおばる隼人に、マユミはほおづえをつきながら微笑みかける。
「昨日めずらしく自分ちに帰ったと思ったら、やっぱりおなかすかして戻ってきたね」
「うん。おじさん、いなかったから」
「家に食べ物は?」
「無い。いつものことだけど」
「そっか。店長、最近忙しそうだもんね。ここにもあんまり顔出さないし」
隼人が店に入りびたるようになってから、早3年。
成瀬は他の店舗も次々と任され、多忙を極めていた。
隼人は一日のほとんどを店の待機室で過ごし、夜はマユミのアパートで眠った。