クリアネス

その日は結局マユミから連絡が無く、仕方無しに隼人は他のコンパニオンの部屋に泊めてもらった。



次の日も、その次の日も、マユミは店に顔を出さなかった。







マユミが来なくなって、1週間が過ぎた。



「あいつからは相変わらず連絡無しか?」



いらだった声でそう言いながら、待機室のドアを開けた男を見て、コンパニオンたちは、あっと声を上げた。



「店長!」


「きゃーっ、お久しぶりです」



大げさに抱きついて喜ぶ女たちを無視し、成瀬の視線はソファの上で三角座りしている隼人に注がれた。


その視線をわざとかわすように、隼人はそっぽを向いてテレビのアニメ番組に見入る。



成瀬が家を空けるようになってから、二人の間には明らかに溝が生まれていた。


居場所を与えてやらなかった者と、自ら居場所を見つけた者。


溝は深まる一方だった。




その時、店の電話が鳴った。



「……もしもし? あ、マユミちゃん?!」



電話に出たボーイのその声に、皆、いっせいに反応して静まり返る。



「どうしたの、連絡も入れないでさ。…うん、うん、……えっ? そうなんだ。…それなら仕方ないよね、うん、わかった」

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