クリアネス
「お姉ちゃん」
「隼人……」
うずくまる隼人を見て立ちすくんだマユミの足もとは、ヒールのないスニーカーだった。
そして、腹をすっぽりと覆う、長めのトレーナーを着ている。
初めて見るそんなマユミの姿に、隼人は言葉を詰まらせた。
「ずっと待ってたの?」
「うん」
「……とりあえず、部屋入って」
「うん」
笑顔を浮かべながら鍵を開けるマユミの横顔には、隠し切れない困惑の色があった。
隼人はうつむいたまま、無言で部屋に上がった。
「オレンジジュース、買ってないんだ。ゴメンね」
そう言って差し出されたカフェオレを見て、隼人の心臓はまたひとつ、痛みを訴える。
いつもなら大好きなオレンジジュースを、欠かさず冷蔵庫に入れておいてくれたのに。
マユミは白湯を飲みながら、隼人の正面に座った。