クリアネス
外の世界は冬の厳しい風が吹いていて、近くのゴミ捨て場から舞い上がった紙くずが、もともときれいじゃない街並みをさらに汚していた。
窓のすき間から冴えた空気が流れ込み、あたしと客の間に冷たい1本の筋を作ってすぐに部屋全体に広がった。
戻れなくなりそうだ。
あたしもあの紙くずみたいに風に吹かれて、飛んでいってしまいそうだ。
だからあたしは手探りで、背後の男の体をなでる。
あたしが飛ばされてしまわないように、しがみつく。
額縁みたいな窓枠の中で少しずつ姿を変えていく町の絵を、しばらく眺めた。
「俺、最近腰の調子が悪くてさ…。上になってくれる?」
25歳という年齢に似合わずそんな発言をして、客は床の上に寝転がった。
「どうしたの?」
「んー。ちょっと痛めちゃってさ」
「……今日はやめとく?」
「大丈夫だよ。まだギックリ腰とまではいってないし」
だけど私のせいで本当にギックリ腰になったら、業務上過失傷害じゃない。
そう言うと、客はあいまいに笑った。