クリアネス
隼人は激しくかぶりを振った。
隼人のひじがカフェオレに当たり、勢いよく倒れた。
「違うよ……そんなんじゃなくて……」
薄茶色の液体がテーブルの上で広がり、1滴、2滴、畳の上へと落ちてゆく。
「……だって」
「だって?」
「子供を作るには、“セックス”しなきゃいけないんでしょ?」
「そうね」
隼人は一度マユミを見て、それからもう一度目をそらし言った。
「それって……いつもマユミお姉ちゃんたちがお店でしてるのと、同じことでしょ?」
「まあ、そうね」
「ほら! 絶対変だよ! どうして好きな人と“セックス”するの?」
「好きな人とするのがセックスでしょう?」
隼人はマユミの顔を凝視し黙った。
ポタ、ポタ、と規則的な音。畳に染み込んでゆくカフェオレの色。
……好きな人と、するのが、セックス。
当然のように放ったマユミの言葉は、隼人を混乱に導いた。
そしてうつむいて言った。
「……わからない」