クリアネス
初めてのセックスは味気ないものだった。
ほとんどされるがままで、時々下される赤裸々な指示に従い舌をはわせた。
「まさか初めてだったなんてねー。モテるでしょうに」
高慢な口調でそう言いながら、マユミはタバコをふかす。
「ねえ、そういえばさ、成瀬さんってまた新しいビジネス始めようとしてるんでしょ?」
「さあ。もう何年も会ってないし」
「出張ホスト、とか言ったかなあ。女向けの風俗なんだって」
「……そう」
「ねえ、隼人さ。もしかして、昔私が言ったこと、心の傷になってたりする?」
マユミはわざとらしくまゆを下げ、隣に横たわる隼人の顔をのぞき込んだ。
それを押しのけ、隼人は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出す。
マユミに背を向け、ベッドの端に腰を下ろした。
「そんなに店長――成瀬さんのこと、邪険にしないであげてね」
マユミはタバコを消すと、ベッドから体を起こした。
「確かにあんたの母親に、体売らせてたのは成瀬だけど、もともとは彼女の借金返済のためだったし。
……それに、彼女が亡くなった後、残った借金を成瀬さんが払ってあげたってうわさよ」
「え?」
驚いて振り向くと、目の前に5万円があった。