クリアネス

「はいこれ。お小遣い」



あっけにとられていると、マユミは裸の隼人の胸もとに、強引に札を押しつけた。



「受け取りなよ」


「………」


「あんたの母親もこうやって生きてたんだから」



一万円札がひらひらと舞い、隼人のひざに落ちる。



「じゃ、私、先に帰るわね」



マユミは服を着ると、鏡の前で髪を直し、はげた口紅をひき直した。



そして部屋に入ってきた時と同じ、何食わぬ顔で一人去ってゆく。



その様子をぼんやりと見送りながら、隼人はしばらく動けずにいた。














「じゃあ、広告のデザインはこれでOKということで」



とあるビルの一室。


成瀬は風俗誌編集者と打ち合わせしていた。



まだ若そうな編集者の男は、数枚の写真を並べため息をこぼす。



「いやー、男前をそろえましたね。これは流行りますよ」


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