クリアネス
彼はまるで親の敵でも見るような目で客に詰め寄り、
「てめー俺の女に何してんだよ」
と叫んで、寝ている客の髪をつかみ、乱暴に上下した。
あたしはすぐにでも客の上から退いてあげるべきなんだろうけど、あまりの出来事に膣が恐縮して収縮。
なかなか抜くことができなかった。
「ひぃぃーっ!!」
客は悲鳴を上げ、いつまでたっても退かないあたしを引っこ抜いた。
あたしは見事に吹っ飛び、赤ん坊がおしめを替えてもらうようなあおむけの格好でフローリングに転がった。
あたしの視界に広がる天井の壁紙。
シミが出来てる。
まるで人間の顔のようだとオカルトな想像をしていたら、客はシャツと靴下だけの姿で逃亡を図ろうとした。
「あ、フリチンですよ」
親切心でとっさにそう言うと、彼は恨めしそうにあたしを見てからパンツに片足だけ通し、部屋を飛び出した。
「おいこらオッサン、忘れモンしてるぞ」
レオが玄関に向かってそんな言葉をポーンと投げる。
すると玄関からも同じように、ポーンとお財布が投げられた。
ありえないくらいの速さで遠ざかっていく足音を、あたしは放心状態の頭でぼんやり聞いた。