クリアネス

タクシーの運転手さんに石垣島のおすすめを聞いたら

「グラスボートに乗るといいよ」

と返答がきた。


その乗り場は石垣島の北側にあって、湾になった海が見事な色彩を放っているらしい。



「見たい!」


「そこ行ってください」



ハイテンションのレオにつられて、あたしの気分もウキウキだ。







40分ほどして降ろされた場所は、運転手さんが言った通りの絶景だった。


真っ白い砂浜がどこまでも長く続き、太陽を強く照り返す。


そして、ブルーともエメラルドグリーンとも言える、表現しがたい水の色。


きっとどんな風に写真を撮っても、絵になるだろう。



「あー。カメラ持ってくれば良かった」


レオは心底悔しそうだ。



「ほんの数時間前までは、まさか石垣島に来るなんて思ってなかったからなあ」


と舌打ちするレオに


「あら。ごめんなさいね。急に連れ出して」


と嫌味っぽく言うあたし。


だけどレオは。



「いや。超楽しいし!」



……どうやらこの子は嫌味が通じないタイプらしい。



「なあ、さくら。携帯のカメラで写真撮ろっか」



ポケットから携帯電話を取り出し、レオはキラキラの瞳であたしを見る。



「ん? 撮れば?」


「じゃなくて」


「はい?」


「一緒に撮ろって言ってんの。ほらっ」


「……っ」



ぐいっと肩を引き寄せられ、ほお同士が触れ合うくらいの距離で、シャッターの音を聞く。

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