クリアネス
一瞬にして急上昇した体温を、あたしは隠し切れなくなり
「うん。バッチリ」
満足そうにレオが手渡した携帯を、ほてった顔で見た。
「……え。これって」
あたしはその写真に面食らう。
「全然景色が写ってないじゃない」
そう。画面を占領していたのは、屈託のない笑顔で写るレオと、その隣のゆでタコ状態なあたし。
肝心の景色は、あたしたちの肩の向こうで申しわけなさそうに、こっそりと入ってるだけ。
「俺がバッチリって思ってんだから、これでいいんだよ」
「せっかくこんな遠くまで来たのに?」
「遠くねーよ」
「遠いじゃん」
「俺にとっては道路一本分の距離の方が、どうしようもなく遠かったけど?」
レオの言葉に、あたしは胸をぎゅっと締めつけられる。
“道路一本分の、距離の方が”
それって……。
どうゆう意味よ?
「さ。グラスボート乗ろっか」
ますますほおの赤みを増していくあたしを放って、レオはさっさとボート乗り場へ歩いていく。
「……待ってよ」
そう言ったら、レオは足を止めて振り返り……
その笑顔の美しさに、あたしは景色さえも見えなくなった。