クリアネス

「僕ら隣の部屋に泊まってるモンなんですけど、良かったら一緒にバーベキューしません?」



短髪の下の濃いまゆげを親しげに下げて、男の人は言った。



親しげ…と思ったのは、たぶん彼の表情のせいだけではなく、その口から操り出される関西弁のせいもある。



「うちら、大阪から来たんです」


と、聞いてもいないのに女の人は付け足した。



「あの、けど、参加させてもらってもお邪魔じゃありません?」


「とんでもない。他にも何組か誘ってますし」


「……じゃあ」



お言葉に甘えて、参加させてもらうことにした。








夜の8時にバーベキューは始まった。


食材が焼けていく香ばしい匂いに混じって、潮の香りが鼻をかすめる。



「あーっ。それはまだ焼けてへん! あっ、ほら! このタマネギ、はよ食わな!」



関西カップルの男性の方はいわゆる“バーバキュー奉行”で、野菜の並べ方や、肉の焼き具合まで、全員に細かく指示を出す。


その姿が、とても面白い。



隣のレオは肉をほおばりながら、福岡から来たという大学院生の男の人と格闘技の話に花を咲かせている。


すごく、楽しそうなレオ。


……来て良かった。

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