クリアネス
「彼氏さん、カッコいいですね」
あたしの左隣りに座っていた関西カップルの女の人が、小声でささやいた。
“彼氏”という響きに、あたしは妙に反応してしまう。
「あ、いや、彼氏じゃないんです」
「え? そうなんですか?」
「はい。弟みたいな存在っていうか……」
言いながら、あたしはすごく違和感を感じていた。
あたしはレオと付き合いたいんだろうか。
よくわからない。
ただ、すごく……すごく欲しい。
漆黒の空は、嘘みたいな数の星をたたえている。
東京じゃ、星なんか見えなかったのに。
宴会は夜の2時まで続いた。
数組いたカップルは、どれも男の方が酔いつぶれ、それぞれの彼女たちがあきれたように介抱してあげている。
レオは、というと……
「さくらー。俺、ちょっと鈴木さんを部屋まで送っていくわ」
誰よりも、ピンピンしている。
一番飲んでいたくせに、酔っ払う気配すら見せず
レオはすでに熟睡し始めている大学院生の鈴木さんを抱え、引きずるように宿へと入っていった。