クリアネス

「やっぱり彼氏さんカッコいいですね」



さっきの女の人――エリコさんが、またしてもささやく。



「だから、彼氏じゃありませんって」


「またまたー。見てればわかりますよ。おふたりが、めちゃくちゃ好き同士ってことくらい」



エリコさんはひじであたしを小突いてくる。


何て答えていいのか、わからなかった。



「……ちょっと疲れたんで、お先に失礼します」



あたしは空き缶の入ったゴミ袋を抱え、その場を去った。








部屋に入ると、レオは先に戻っていたらしく、お風呂場からシャワーの音が聞こえた。


あたしは窓を開けて外の景色を眺めた。


夜は、沖縄の海もやっぱり黒い。



ガチャッ、と音がして、風呂場からバスローブをまとったレオが出てきた。



「あ、先にシャワー使ったから。さくらも浴びてくれば?」


「うん」



何だか奇妙な会話だなと思いつつ、風呂場に入る。



湯気に包まれたバスルームは、レオの肌をあたしに連想させた。


頭からシャワーをかぶると、髪を伝ったお湯が口の中に入った。



潮の味がする。

ずっと潮風に吹かれていたから。



今日一日、あたしとレオは同じ風の中にいたんだ……。


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