クリアネス
「なあなあ、さくら。ドラえもんの道具で何か手に入るなら、何がいい?」
突然、突拍子もない質問をされ、ビックリした。
彼がこんな非現実的なことを言うのは珍しいから。
「……わかんない。コウタロウは?」
「ん~、そうだなあ」
コウタロウは視線を天井の方に向けて、しばらく考える。
そして、ポンと手のひらを打った。
「俺はやっぱり、どこでもドアかな。さくらと一緒に、いろんな所を旅行するんだ」
あ、でもちょっと待てよ、とコウタロウは首をひねった。
「タイムマシンでもいいな。将来の俺らの子供とか見てみたいし」
そう言って、身振り手振りを交えながら笑うコウタロウ。
その姿をまっすぐ見ることができず、あたしはテレビに視線を逃がした。
「で、さくらは?」
「………」
「何か道具が手に入るなら何がいい?」
コウタロウの手があたしの肩にかかる。
あたしは彼の方を見ない。
今は、彼の目が見れない。
「……惚れ薬」
「そんな道具あったっけ?」
と、コウタロウは首をかしげた。
そして
「けど、もし惚れ薬があるなら、俺も欲しい。
さくらに俺のこと、もっともっと好きになってもらいたいから」
そう言って、あたしに唇を近づけてきた。