クリアネス
しばらくすると、コツ、コツと、諦めて去っていくコウタロウの足音がした。
あたしはそのまま、玄関にうずくまった。
そして視界に入った、最近買ったばかりのブランド物の靴を扉に向かって投げつけた。
……どうして。
どうして誰も気づかないの?
あたしは貴方たちのことなんか愛していないのに。
ただ、求められたかっただけなのに。
誰か本当のあたしを見て。
こんなに汚いあたしを見てよ。
そして、「汚くてもいいよ」って、笑って言って……。
頭が痛くなるくらいに泣き続けた。
これだけ涙を流せばキレイに生まれ変われるんじゃないかと思ったけど
泣きやんだ時鏡に映ったのは、ボサボサ髪の、相変わらずみじめなあたしだった。
あたしは鼻をすすりながら、窓から向かいのビルを見た。
華奢な後ろ姿……。
表情は見えないけど、どうしようもなく愛しい姿がそこにあった。
好きだよ。
もう出ないと思った涙が、また一筋流れた。