クリアネス

やっぱり、惚れ薬なんか、いらない。


だから代わりに、あの子のことを忘れてしまえる薬をあたしにください。



苦しいくらいに甘い足跡を

もがくほどに欲しい気持ちを


全部消し去ってしまえる薬をあたしにください。



そしたらあたしは、貴方と出会う前のあたしに戻れる。


何も持たなかったあの世界で、もう一度生きていける。




……だけど貴方は

決してあたしを忘れないで。











次の日から、あたしは大学を休んだ。


誰とも接触を持たず、カーテンを閉め切った部屋の窓際で一日の大半を過ごした。



食事さえも、まともにとっていない。


物を咀嚼してのみ込む、という作業が、ひどく無意味なことのように思えた。




もっともっと

あたしの体が弱ればいい。



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