クリアネス
「良かったー。このままさくらとコウタロウが別れちゃったら、どうしようかと思ったよ」



まるで、自分のことのように喜んでいるミカ。


どうしてミカはあたしなんかのことで、こんな風に喜んだり心配したりしてるんだろう。


普通は、そうなんだろうか。

友達ってそんなもんなんだろうか。



……わからない。



うまく頭が働かないし、そういえばどうして自分がこんなにふさぎ込んでるのかすら、あたしは忘れてしまった。



あの楽しい夜の後に……何かとても哀しいことがあったような気がするけど。


うまく思い出せなくて、思い出したくなくて。



ただ、たったひとりの名前だけが、グルグルと血液みたいにあたしの中を回ってるんだ……。




「ねっ。行こうよ、さくら」



ミカのはずんだ声に、ハッと顔を上げた。



「……あ、うん」


「行く?」



あたしをのぞき込むミカの瞳と目が合った。


そのまつげには、きれいにマスカラが塗られ、扇のように広がっていた。


少し明るく染めた髪はアップにしていて、夏らしさが漂っている。



それを見ていると、自分ももう一度化粧をして外に出てみてもいいかもしれない、という気持ちが生まれた。



「じゃあ……あたしも行こうかな。バーベキュー」


「やったー!」



ミカは飛び上がって、あたしに抱きついた。


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