クリアネス

「別にわざわざ道具のセットなんて、買わなくても良かったんじゃねーの? ツヨシ」



アキヒトがからかう。



「うるせーな! ジャパネットで安かったから買ったんだよ!」



むきになって反論するツヨシに、笑い声が起こる。


以前のまんまだ。



それぞれ持ち寄った材料が、網の上でキツネ色のこげ目を作っていく。


皆くだらない話で盛り上がりながら、次々に缶ビールを空にした。




「食べないの?」



横から尋ねてくるコウタロウ。


心配をかけたくなかったから、あたしは焼きたてのエリンギを箸でつまんだ。


だけどやっぱり食べる気にはならなくて、そのままコウタロウの口に放り込んでやった。



代わりにビールをごくごくと流し込む。


空腹の体の中を、炭酸が通っていくのがわかった。


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