クリアネス
第11章【遠くまで】
電車が、またひとつ発車していく。
駅を行き交う人たちが、こっちを見てるのは感じていたけど、たいして気にならなかった。
あたしの視界全部を、レオの顔が覆っていたから。
「……」
そっと唇を離す。
「……あは」
レオが横を向いて笑った。
「なんっつーか、その、照れるな」
朝日に照らされたレオのほおが、ピンク色に染まる。
初めて見た。
こんな顔。
好き。
大好き。
……いいの?
もう我慢しなくても?
「あーっ! 泣くなよ!」
ぼろぼろと大粒の涙を流すあたしを、レオは必死でなだめる。
「だって、もう会えないって思ってたっ……」
「俺も、もう会わないって思ってた」
微笑みを浮かべたレオの顔が近づく。
コツン、とおでこが当たった。
温かい。
レオのこめかみに、うっすら汗がにじんでいるのが見えた。
走ってきてくれたんだ。
そう思うと、ますます涙はあふれ、止まる気配すら見せなかった。