クリアネス
「……レオ?」
レオは背中を向けたまま、返事がない。
あたしの胸に不安が押し寄せる。
もしかして……怒った?
あんまりにもあたしが嫌がるから。
「ご、ごめん! レオ」
「俺も辞める」
「え?」
あたしはベッドから体を起こした状態で、ピタリと止まった。
レオが振り向く。
その表情は笑っていた。
「俺も、店辞めるって言ったの」
その言葉に、あたしは自分の耳を疑った。
何?
何が起こったの?
「さくらが普通の女の子に戻るって決心したんなら、俺も心配させるようなことやめなきゃ。悔しいけど、エッチはそれまでおあずけ」
「……でも、いいの?」
「何が?」
「あたし……知ってるの。レオが働いてる理由」
レオがいぶかしげにあたしを見た。
「あたし、成瀬さんに会ったから……」
突然あたしの口から出た“成瀬”という名前に、レオのまゆがピクリと動いた。
レオはうつむいて、少し何かを考えているみたいだった。
「うん……いいんだ。借金は、ほとんど返し終わってるし」
決心したように、うなずきながら言う。