クリアネス
「キレイな景色に感動してさ、うまいもん食べてさ。これからの俺らのこと、一緒に考えよう」
これからの、あたしたち……?
「俺らは生まれ変わる。ただの透明な存在に戻るんだよ」
あたしが、ポカンと口を開けたまま黙っていると
「ん? あれ? あんまり嬉しくなかった?」
と、レオは首をかしげ、頭をかいた。
「……バカ」
「バ、バカですか?」
「嬉しくないわけ……ないじゃない!」
薄い胸板をバンバン叩いて、あたしはできる限り下を向いた。
ホント……
この子はいったい、どれだけあたしを泣かせれば気が済むんだろう。
自分の部屋に帰り、あたしは真っ先にクローゼットからボストンバッグを取りだし、荷造りを始めた。
少しの着替えと、買ったばかりのデジタルカメラ。
そして、あの卒業文集もバッグに詰める。
レオは何を持っていくのかな。
あいつのことだから手ぶら同然だったりして。
明日からの旅に備え、あたしは早々と眠りについた。