クリアネス
しばらくすると、向こうからレオが歩いてくるのが見えた。
あたしに気づいていないのか、レオは車の多い交差点でそわそわしながら信号待ちをしている。
「レオー!」
あたしは20メートルほど離れた所にいる彼に呼びかけた。
レオは顔を上げ
「おー! 準備できた?」
大きく手を振った。
「うん、できたよー! 今下りるから待ってて」
そう言って、あたしは荷物を詰めたボストンバッグを手に取った。
ちょうど信号は青に変わり、レオもこっちに向かってくる。
それを見届けてからカーテンを閉めようとした。
その時だった。
「え……」
一瞬、見間違いかと思った。
コウタロウの姿。
信号を渡り終えたレオの肩を後ろからつかんだかと思うと
次の瞬間、レオの体は地面に叩きつけられていた。
「っ……!!」
全身が大きく脈打つ。
あたしは部屋を飛びだした。
エレベーターを使うのすらもどかしくて、階段を一気に駆け下りた。