クリアネス

「当分はアキラさんの部屋で隠れさせてもらってさ、また考えようよ。これからのこと……」



あたしはそこまで言いかけて、ハッとした。



“これからの俺たちのことを考えよう”



昨日の今頃も、同じような台詞を言ってたんだ。



けど、その言葉の持つ意味は、昨日と今日ではまるで違う。




「……もう、寝よっか」


「うん」



部屋の電気を消すと、外の世界の暗闇が、あたしたちの部屋に滑りこんできた。



ベッドに横になると、いろんな思考が頭中を暴れた。



アキラさんは、あたしたちが逃げている本当の理由を知ったらどう思うだろうか。


東京の皆、今頃心配してるんだろうな。


ミカの取り乱す姿とか、簡単に想像つくよ。


お父さん、お母さん、ごめん。


コウタロウ……。




「ごめんな」



隣で、またレオが謝った。



「謝らないで。逃げようって言ったのはあたしなんだし」


「いや、そのことじゃなくて」


「じゃなくて?」


「……取り乱して、ごめん。俺がさくらを守ってやんなきゃダメなのに」



いらだちを表すかのように、レオの声が低く震えた。


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